魂で彫る

目的をつかむ

ワンポイントでなければ、何度か通っていただくこととなりますが、心がけていただきたいのは、刺青を入れると自分で決めたことを最後まで忘れないことです。私の考えではありますが、人の気持ちは弱いもので楽をしたいと弱気になり何かのせいにしてしまうものです。刺青に挑む時の困難は全て自分自身から生まれてきます。私の経験の中から見ますと、刺青を入れる困難に、さほど違いはないのですが、一人一人環境が違うという所に問題が起きるようです。
目指す物事が有れば必ず困難が付いてきます。 途中で投げ出してしまう方も見えますが、中にはこんな方がいます。収入が下がったため、側ら毎日新聞配達のお金で刺青に通う方や、地元を離れる前日に何時間もかけ全て仕上げた方・・・。様々な希望に向かう方々のお手伝いをしながら私自身勇気をいただいてまいりました。 だからこそ逃げ道の矢印を何かのせいにせず自分自身に向け頑張ってほしいのです。 それは刺青に限らず全ての物事が同じなのです。完成していない方も自分の選んだ道筋を忘れないでください。

刺青に挑む志 その1(希望)

どなたでも分かることと思いますが、刺青は痛みを伴います。ごくまれに「痛いですか?」といきなり聞いてくる方がいますが、始まる前から痛みの気持ちが先立つ様では、仕上げることは、むずかしいと思います。仕上げた方ならわかっていただけると思いますが、痛みと向かい合うだけなら我慢にしかなりません。

我慢は心にだけでなく体にも悪いもの。我慢は逃げ道を作りたくなる原因の一つです。「我慢でなければどうすればいいの?」と思うかもしれません。
そこで(志その一)我慢を辛抱に変えることをおすすめします。辛抱とは目的、志、夢と言った様々な物事に向かう通過点に起こる障害と向かい合った状態だと思います。この障害に負てしまうとしたらそれは希望が小さかったのでしょう。その障害(痛みやあなたの状況)よりも大きな希望をもってください。どんな希望であっても、あなたの自由なのです。これも刺青に限らずどんな時にも役に立ち、必ずあなたの強い味方となるはずです。

刺青に挑む志 その2(迷い)

こう言ったエピソードがあります。「龍が彫りたいのですが・・でも鯉もいいし」私は「龍のが良いよ?」「鯉のが○○さんに合いますよ?」とは言いません。○○さんの希望がどれだけのものか自分の物差しで見てしまいそうになる時があります・・・目指すのはあなたであり、私は仕上がるあなたを信じて仕事に挑みたいのです。あなたに迷いがあれば私も同じように迷ってしまい、障害が初めからある訳で、その障害を他者にまで向けては良く在りません。私は未熟ですが今出来る事を自分なりに目指しているだけであります。私に不安を感じるのであれば、どんな刺青に仕上がったとしてもそれは迷いの有った刺青に変わり有りません。

私は仕事を受けると決めた瞬間から、まだ会った事のないあなたの希望が、迷いなどに負けぬ大きなものだと信じでいます。もし刺青を始めてあなたに障害が起こり、その障害に負けそうになったならば逃げてはいけません。
引き返してください。また刺青と言う厳しい困難に立ち向かうために引き返してください。そしてまた迷いの無い、心の筋力を鍛え戻ってくればよいだけなのです。

刺青の品格

銭湯や海などで知らない方に「きれいな刺青ですね?」などと言われると刺青の図柄より最後までやり遂げた心の方を褒められた気がします。だからと言って自慢して他人に見せても精神面まで見えません。刺青経験者の方ならば「アイツ頑張ったな」くらいなものでしょう。刺青経験者でない方は、まったくその頑張りなど分からないはずです。

しかし、忘れないでいただきたいことは、刺青を入れたあなたにもまっさらな体の頃があり、刺青経験者でない方の気持ちは分かるはずで、未経験者にとって迷惑となる場面が多々あるということを意識しなければなりません。なぜならその刺青の価値は他人から見れば物質的なものでしかなく、その物質的なものが不快なものとなるか、心地良いものになるかはあなた自身の責任です。言い換えれば、心身極み道の刺青の品格に関わり、さらに言えば日本刺青全体の品格にも関わってきます。願わくば物質的な自慢を内側に擱いて内面的な自身にしていただければ、あなたの刺青の価値も格段と上がる事と信じております。